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稲富博士のスコッチノート

第3章 アイラ島とアイラ ウイスキー・音楽祭

(1) アイラ島全図

毎年5月末の約10日間アイラ島で「アイラ ウイスキー・音楽祭」が開催される。今回はこのイベントとアイラ島の紹介です。

ご存知Laphroaig, Bowmore, Lagavulin等ピートの薫煙が強烈に効いたモルトウイスキーはアイラ島の産である。このアイラ島は、スコットランドの西海岸から25km、北アイルランドから37kmに位置する島で、西側は大西洋に面している。面積の637平方kmは淡路島(592平方km)よりやや大きい。グラスゴーから飛行機なら僅か30分だが、陸路をドライブしてキンタイヤー半島のケナクレイグ迄行き、そこからフェリーに乗ると全行程約6時間を要する。人口は約3,500人で、最大の産業は農業というどう見ても典型的は過疎の離島である。

(2) 今年のアイラフェスティバルのプログラム。 24ページあり、全イベントとスケジュールが紹介されている

18年前にアイラ島の住人7-8名が集って、アイラを活性化するにはどうするか話し合っていた。彼らの身分はまちまちで、医師、協同組合の女性マネジャー、道路工事関係者、音楽教師、少年ゴルフのインストラクター、灯台局勤務、リタイヤーした人等。島はウイスキーが健闘しているといってもその雇用力はそんなに大きくないし、もっと直接的に地元経済に貢献するものは無いか議論を重ねた。アイラの人は音楽が好きで、特に歌自慢が多い。観光シーズンにケルト音楽を中心にした音楽祭をやって、少しでも観光客を増やそうとの結論でアイラ音楽祭が始まった。長年音楽だけのフェスティバルだったが、昨年からアイラの蒸溜所が協賛することになり、名前も「Islay Whisky and Music Festival」となった。ウイスキーが加わることで、内容も格段と充実した。

(3) Bowmore Nightで歌うフォークシンガーRobin Laing。スコットランド民謡の弾き語りはローカルのテーストが一杯

10日間にわたるプログラムは大きくは3つ内容に分けられる。1.ウイスキー蒸溜所関係。島内の7蒸溜所とポートエレン製麦工場の見学・試飲、体験ピート堀り、ウイスキーテースティング大会、ウイスキーに関するのクイズとQ&A等。2.音楽とダンス。バグパイプ演奏,フォーク歌手のコンサート、フィドルとアコーディオンバンドとceilidh(ケイリーと発音しケルトの歌や踊りの集い)、地元学校のバンド等。3.野外活動。釣り大会、丘歩き、ゴルフ、ボーリング等。多くのコンサートやceilidhは蒸溜所のゲストルームやウイスキーの樽詰場で行われるし、種々のクイズやコンペにはウイスキー会社の賞品が提供されていて、ウイスキー、ケルト音楽、ダンス等アイラ独特の雰囲気と楽しさが一杯だった。

(4) Kildalton ChapelとHigh Cross。8世紀に造られた。固有の円形リングがついたケルト十字架としては最古のもの

知られていないが、アイラ島はウイスキーと音楽以外にも魅力が一杯ある。中でも歴史と自然に魅了される人は多い。歴史的にアイラを含むスコットランドの西海岸は複雑で激しい変動を経験している。スコットランドのスコットはスコット族に由来するが、このスコット族は紀元4世紀頃に北アイルランドからやってきた。キリスト教と、多分ウイスキー造りの技術も携えて・・・。スコット族はその後勢力をスコットランド西岸全域に広げDalriada王国を建設したが、8世紀には北欧からヴァイキングが侵入し13世紀まではノルウェイ領だった。13世紀にスコットランドに返還されたが、地域は15世紀終わりまで独自の領主(Lord of Isles)を戴き大きな自治権をもっていた。これらの輻輳した歴史を物語る遺跡や地名がアイラの各地に残っている。

(5) 道端に咲くブルーベルの花。戦いに行った恋人を思い、乙女がこの花に語りかけるスコットランド民謡“スコットランドの釣鐘草"は日本でも良く知られている

遺跡と並んで豊かな自然もアイラの魅力である。野鳥の天国で多く鳥がみられるが、中でも春先までここで越冬するカナダ雁の大群には圧倒される。街から少し離れると鹿の群れによく出会うし、蒸溜所から数十m先の海中の岩場にはあざらしが寝そべっていたりする。草花も多い。早春の枯れた林の中ではスノードロップやクロッカスが一斉に可憐な顔を出すし、5月にはいたるところでブルーベルが咲く。

Laphroaig蒸溜所工場長イアン・ヘンダーソンさん。"皆さん、是非Laphroaigへお越しください"

最後に今回フェスティバル中に訪問したLaphroaigのHenderson工場長からのメッセージをお届けします。

日本のバランタイン ホームページの読者の皆様、最近世界中でLaphroaigの品質が高く評価されるようになり人気が着実に上がっています。この為蒸溜所でのウイスキー造りも活気があります。ビジターセンターも新設し、皆様のお出でをお待ちしています。アイラは素晴らしい所です。是非一度来てください。-Ian Henderson