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稲富博士のスコッチノート

スコットランドとのおつきあいがはじまって40年

稲富孝一氏は元サントリーチーフブレンダー。輿水精一チーフブレンダーの元上司であり、あの「響17年」の開発者です。1968年には、スコットランドのヘリオット・ワット大学に留学、醸造学の基礎研究で博士号を取得しています。2000年にサントリーを退社されたのですが、その後もスコットランドへの思いは断ち難く、現在、グラスゴー大学の客員研究員として、スコッチウイスキーの産業史を研究していらっしゃいます。2016年には世界的なウイスキー専門誌『ウイスキーマガジン』が認定する「Hall of Fame」を受賞し、今回日本人として2人目となる“ウイスキー殿堂入り”となりました。スコッチ業界にも知己が多数。氏ほど、スコッチを語るに相応しい人がいるでしょうか。

スコッチノートは、2001年から連載を開始した、バランタインウェブサイトの人気ページ。研究者らしい緻密な事実調査はもとより、写真もクレジットのあるものを除き、ほぼご本人による撮影、というこだわりです。グラス片手に、じっくりとお楽しみください。

2024年10月掲載

第133章NEW
スペイサイド研修ツアーその1.バルヴェニーとキニンビー蒸溜所

ロンドンに本部があるIBD(Institute of Brewing & Distilling: 醸造・蒸溜酒学会)は、主としてビール、蒸溜酒、製麦関係の研究者、技術者が会員の組織で、現在の会員数は世界で4,000人強・・・

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連載開始にあたって稲富 孝一

スコットランドとのお付き合いが始まってから30年以上になった。初めてスコットランドを訪問した時はジャンボジェット機が導入される前で、羽田からアラスカ経由のロンドンまでの所要時間は17時間、ロンドンから乗り継いだヴァンガード機は随分ガタガタする4発のプロペラ機だった。着いたエジンバラ空港のターミナルは木造の平屋建て、周りの麦畑が6月の陽光に揺れていた。この時から5年間、エジンバラのヘリオット-ワット大学で醸造関係の基礎研究に携わったが、傍ら蒸溜所での調査研究や実習の機会も得た。

又味の研究は"飲むに如くはない"と、多数のシングルモルトやブレンドを、パブ、バー、自宅等ところ構わず片っ端から飲んでいたが、この自分の鼻と舌をウイスキーにどっぷり漬けて覚えた香味の記憶は、後にブレンダーになった時に実に貴重な財産として役立った。帰国後もヘリオット-ワット大学の委員会やMorrison Bowmore 社の仕事でスコットランドとの関係は続き、正に第二の故郷となってしまった。2001年4月

稲富 孝一
Koichi Inatomi

  • ・1936年兵庫県生 大阪大学理学部化学科卒
  • ・サントリー(株)入社
  • ・Heriot-Watt大学(Edinburgh)PhD
  • ・サントリー(株)のチーフブレンダー、取締役洋酒研究所長、Morrison Bowmore Distillers社(Scotland)取締役等 を歴任
  • ・2016年世界的なウイスキー専門誌『ウイスキーマガジン』が認定する「Hall of Fame」を受賞
  • ・現サントリーホールディングス(株)社友
  • ・日本スコットランド協会会員
  • ・Keepers of the Quaich会員