サンディー・ヒスロップ
ザ・リッツ・カールトン大阪
北原 航
(きたはら わたる)
ホテル阪急インターナショナル
寺澤 愛里
(てらさわ あいり)
bar T i.s.m
髙木 明
(たかぎ あきら)
司会
本日は、バランタインに深く関わる皆様にお集まり頂きました。それでは、ご紹介いたします。まず、バランタイン5代目マスターブレンダ― サンディー・ヒスロップさん。そして、マスター オブ バランタインのザ・リッツ・カールトン大阪 北原 航さん、ホテル阪急インターナショナル 寺澤 愛里さん、bar T i.s.m 髙木 明さん。以上4名の方にお越し頂きました。
このセッションでは、ブレンデッド・スコッチの代表格とも言われるバランタインについて、サンディーさんと話していきたいと思います。
髙木
つくり手であるマスターブレンダーのサンディーさんの視点からブレンデッド・スコッチの最大の魅力とはなんでしょうか?
サンディー
ブレンデッド・スコッチの魅力は様々なモルト、グレーン原酒の集合体であり、複雑ながらも全体のバランスを重視することでスムーズで丸みを感じることができる点にあります。
髙木
私自身、若い頃は個性的なシングルモルトを飲み続けていましたが、年齢を重ねるとブレンデッド・ウイスキーがなぜかスムーズに入ってきました。
サンディー
ウイスキーを飲み始めの頃は、味が分かりやすいシングルモルトウイスキーを好む傾向があると思います。経験、年齢を重ねると味覚も発達してくるので、複雑でよりリッチな味わいのものを追求していきたいと思うのではないでしょうか。
北原
バランタインはある意味個性的なウイスキーだと思います。ブレンデッド・スコッチという括りの中でバランタインの魅力とは何でしょうか?
サンディー
バランタインの魅力は、一つの個性ある原酒を突出させず、全体のバランスを重視しているところです。スコットランドの各産地の風土の特徴をうまく取り入れ、デリケートでバランスが良く、甘く長い余韻を特長としています。
寺澤
バランタインはブレンデットウイスキーの中でも「まろやかな甘さがあって上品なウイスキー」ですね。
サンディー
「上品」はとてもいい言葉ですね。バランタインはスパイシーさや、微かなスモーキーさを隠し味としながらも、全体のバランスとハーモニーを追求しています。
北原
バランタインの魅力として、ファイネストから30年まで幅広いラインナップがあると思います。それぞれ違いや特徴を教えてください。
サンディー
やはり熟成年が増すごとに味わいの深さと甘さも増していきますが、それぞれ製品特有のレシピを持ち、12年、17年、21年、30年などにふさわしい樽を使っています。例えば12年以下の商品に関してはアメリカンオークの使用率が高くなりますが、17年、21年、30年に関しては熟成をゆっくりさせる目的で大きなヨーロピアンオーク樽も使います。17年以上の製品にはオークの香りだけではなく、熟成させた原酒本来のフレーバーを引き立てたいのです。
髙木
ウイスキー作りは長い年月を要し将来の製造計画が難しいと思いますが、気をつかっていることはありますか。
サンディー
バランタインは常に各地域の在庫管理を重視しています。1年、2年だけの在庫ではなく、常に10年先の原酒の在庫がどうなるかを意識しています。またバランタインは長い歴史があり、自社以外の蒸溜所とも原酒交換をするコネクションと習慣が昔からあります。その際には熟成する前のニューメイクとして仕入れて、樽詰め、熟成はバランタイン社がこだわりをもっておこなっています。
髙木
熟成する前の原酒を購入して、バランタイン社がオリジナルの樽で育てるんですね。
サンディー
その通りですが、正確には購入するわけではなく物々交換で仕入れるのです。スコットランド人はケチなので(笑)。バランタインで重要な要素は樽なのです。すでに樽詰めされた原酒ではなく、ニューメイクを仕入れて、私たちが選んだ樽で熟成させる理由は、17年の原酒から感じ取れる50%のフレーバーは樽によるもので、残り50%のフレーバーは原酒によるものと考えるからです。17年以上のウイスキーをつくる時にいつも直面する難しさは、オークの香りをいかに抑えてフルーティーさを引き出すかという点です。
寺澤
バランタインとジャパニーズ・ウイスキーは、原料や製造工程が似ていると思いますが、特に似ている部分はありますか?
サンディー
サントリーのジャパニーズ・ウイスキーとの共通点としては、どちらも甘さがあると言うことです。
司会
最近ではウイスキーを題材にしたドラマが流行った影響で、日本のウイスキーはスコッチの影響を受けていると日本のお客様にも理解されているようですね。
サンディー
まさにそうですね。世界には5大ウイスキーがありますが、スコッチ・ウイスキーにもっとも近いのがジャパニーズ・ウイスキーだと思います。それぞれの違いや似ている点を感じ取りながら様々な飲み方で、多くのお客様にウイスキーを楽しんで頂きたいです。
<敬称略>